人材採用に悩んだら「採用マーケティング」。導入のメリットと手法を紹介

労働人口が減少し、採用手法も多様化する昨今、
従来の方法では思ったように人が採用できない。
人材不足で事業が発展できない…とお悩みの人事担当者の方へ。

6000を超える経営相談に対応し、自身も企業で育成や人事を担当した経験のある人材育成コンサルタントの岡本陽が、人材採用のお悩みを解決すべく取り入れている採用マーケティングの導入のメリットと、具体的な手法についてお伝えします。

岡本 陽(おかもと あきら)IMソリューション株式会社 代表
人材育成コンサルタントの岡本陽が、経験を基にご紹介します。

採用マーケティングとは

採用マーケティングとは、マーケティング手法を用いて採用活動を行うというものです。

マーケティングとは顧客のニーズや気持ち、またはその変遷を顧客起点で考え、把握し、顧客に寄り添った商品を提供することで売れる状態を作り出すことです。

これら「顧客」を「求職者」に置き換えることで、求める人材採用を目指すということになります。

採用マーケティングを導入することで、自社が求めている人物像を明確にし、求職者のことをしっかり理解することで、効率的でミスマッチの少ない採用活動を行うことができるメリットがあります。

採用でお悩みの方には、是非ともおすすめできる手法です。

採用マーケティング①共感

採用マーケティング導入の前提として、求職者の方に「共感」してもらうことが重要です。
なぜそんなお話をするかというと、多くの場合、採用する側とされる側との価値観のミスマッチが存在しており、企業側が良いと思っている情報を発信しても、求職者の心に何も響かないということが非常に多いためです。

採用マーケティングは、求職者のことを知るための活動です。

まずは求職者の価値観について知っておきましょう。

企業と求職者の「価値観」のミスマッチ

採用の話をする前に「マーケティングの変遷」についてお伝えします。

マーケティングの神様と言われる、フィリップ・コトラー先生のマーケティング4.0ではマーケティングが下記の様に変化していっているといわれています。

①製品志向主義:モノが不足している時代
キーワードは「優れた技術を元に考える」「良いモノを作れば売れる」

②顧客志向主義:良いというだけでは売れない時代
キーワードは「顧客ニーズを元に考える」「ニーズのある人が対象」

③価値主導主義:モノが飽和している時代
キーワードは「機能や性能よりも、その価値が重視」「精神的な満足を要求している」「社会貢献」

④自己実現主義:デジタル時代である現在。
キーワードは「自己実現欲求を満たす」「ファン作りが重要」「驚きを作りだす」

これらを企業で考えると、普段事業活動を行っている場では「価値」に注目し「自己実現」や「共感」を重要な要因と位置づけして、マーケティング活動を行っていますが、採用の現場では従来から変わらず就業時間、就業場所、給料、休日、など待遇面での会話が中心となっており、いわゆる「①製品志向主義」の傾向がいまだに強いことが多いです。

しかし採用対象となる求職者は、「③価値主導主義」や「④自己実現主義」のマーケティングの洗礼を受け、その世界で育った人間であることから、「価値」「共感」に重きをおくことが多いです。

つまり、採用する側と、される側の価値観にミスマッチが起きているということになります。

人は、何のために働くか

「なんのために働くか?そんなもん生活のため、金のためだよ!」と言われるかもしれませんが、人は自分の仕事に対して価値を求めています。

何のために働いているのか?

自分の仕事は何に役立っているのか?

働く人にとってこの二つが重要であり、問いつづけることになるのです。

なので、この会社で働くことによってこの二つの「問い」の「解」が得られると、求職者の方に認識してもらわなければなりません。

会社説明会、面談を通じてこの「この会社で働けば、この問いの解が得られる」というメッセージを伝えつづけることが重要になります。

こういった話しをすると、
・給料もらうのだからどんな仕事も文句をいうな
・仕事は仕事!それ以上でもそれ以下でもない
・やりがいなんて話をするのは甘えだ
・どんな仕事も給料がよければそれでよいじゃないか
・給料が高ければどんな仕事でもがまんしてやるべき

こんな声を頂くことがあります。

そこで、以下の書籍の紹介をしましょう。

「ブルシットジョブ ~クソどうでもいい仕事の理論~」

2021年に日本語版が発売され話題になった、デヴィット・グレーバー著「ブルシットジョブ ~クソどうでもいい仕事の理論~」。こちらには様々なブルシットジョブが紹介されており、いずれも高給であるにもかかわらず、その仕事に従事している人は続けられず辞めてしまうエピソードが多数掲載されています。

ブルシットジョブとは、
「被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完全に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用の形態である。」

つまり、人間は自分の仕事が世の中の役に立っているかどうかがとても重要で、その意義が見いだせないと仕事を継続できなくなる、ということがわかります。

楽しい仕事

楽な仕事

同じ「楽」という字で表現しますが、中身は全く異なります。

楽であっても楽しくなければ続きません。
しかし、楽しければ、楽でなくても続けられます。

楽しさは「仲間」「達成」「没頭」などの「やりがい(意味)」から起因します。
「やりがい」を考えると、自分の仕事は世の中にどの様な影響を与えるのか?
自分は何のために仕事をしているのか?という事にいきつきます。

面接時に仕事のやりがいをしっかり伝える

これまでのことを踏まえると、面接の際には求職者に

「この会社に入れば〇〇の様なことが実現できる」
「ここに入れば〇〇という経験ができる」
「自分の仕事は世の中の〇〇に影響を与える」

と感じてもらうことが重要になってくるということがお分かりいただけたでしょうか。

仕事が楽しければ少々の苦難を乗り越えることができ、自己を成長させることができます。

裏を返せば、この仕事を楽しいと思ってもらえる人材であれば、困難にも打ち勝ち、活躍できる人材として成長してくれることでしょう。

採用の場面では、自社の仕事や方針を熱く語り、共感してもらうアプローチを意識しましょう。

採用マーケティング②リードジェネレーションとナーチャリング

ここからは、求職者に対するアプローチについてお話していきます。

非認知層と認知層

求職者をマーケティング的なターゲットと考えると、自社を知っている「認知層」と自社を知らない「非認知層」に分けられます。さらに、自社を知っている「認知層」の中には商品やサービスを購入してもらっている「購買層」に分かれます。

採用担当者としては、おおざっぱに言って

①自社を知らない求職者(非認知層)に自社を知ってもらう(認知してもらう)活動

②自社を知っている求職者(認知層)に自社に入社してもらう(マーケティングで言うと購買してもらう)活動

以上2種類の活動をしなければいけないということになります。

通常のマーケティングでは、非認知層を認知層にする活動をリードジェネレーションといい、認知層を購買層にする活動をリードナーチャリングといいます。

リードジェネレーションとナーチャリング

リードジェネレーション

リードジェネレーションのリードは「見込み客」という意味で、ジェネレーションは「発生・生成」という意味で、一般的に日本では「見込み客発掘」などといわれます。
非認知層を認知層にするために、広報活動をおこない当社の商品やサービスを知ってもらう活動です。

リードナーチャリング

リードナーチャリングのナーチャリングは「醸成」という意味で、一般的に日本語では「案件醸成」などといわれます。
当社の事を知っている認知層を購買に向かわせ「購買層」にするための活動なので、商品具体的な機能や価値を訴求し購入してもう活動です。

この二つの活動は異なる活動であり、知ってもらうために発信する情報と、購入してもうらための情報は異なる場合が多く、プッシュ型で活動する場合の活動も異なります。
非認知層、認知層、それぞれの段階を一段進めるために、それぞれに合った異なった情報を用意して発信する必要があります。

非認知から購買にステップアップしていく図
リードジェネレーションとナーチャリング

求職者の求めている情報を発信する

就業希望者からエントリー、入社に進んでいく図
採用現場におけるリードジェネレーションとナーチャリング

採用の現場ではリードジェネレーションとリードナーチャリングを異なる活動と認識していているので、リードナーチャリングとしてエントリーしていただいた求職者さんに対して、フォローアップの連絡はしていると思います。

具体的には、合同就職説明会などで配布する資料と、エントリー後のフォローアップする時に発信する情報が同じ場合が多いです。
というのも、フォローアップする際に発信する情報についてあまり準備していないといった方が良いかもしれません。

会社側は「当社の事は伝えた、あとは求職者に判断してもらうだけ」という態度を取っている感じなのです。
それなので「追加で情報を伝える必要があるのか?」となるのでしょう。

通常のマーケティングで考えると、自社の商品やサービスの事を知ってからが勝負ですよね。
せっかくダイレクトにつながった見込み客に対して自社の商品やサービスを競合の中から選んでもらう活動をする際に、選択されるために何をしますか?

相手の課題やニーズにあわせて、当社の商品やサービスが「最適解」ですよと様々情報発信をしますよね。
もちろん、相手に不快にならない程度に、です。

求職者は基本的に複数の企業を受けています。
それを前提に考えると、求職者は第一志望、第二志望、第三志望を決めると思いますが、そこでいかに順位を上位にあげられるかが勝負になります

そのために、ダイレクトにつながった求職者に対して、求職者の求めている事に対してどの様な情報を発信するかがポイントになるのです。

採用マーケティング③採用ターゲットの明確化

採用のターゲティングとペルソナ

「誰でもいい」と「あなただから」

「誰でもいい」と言われるのと「あなただから」と言われるのとどちらが嬉しいでしょうか?


セミナーや研修でこういった話をしますと、
「いや先生、人手が足りず、猫の手も借りたいので来てくれるのであれば誰でもいいんです」
と言うので「誰でもいい」のはやまやまかもしれません。

ただ、採用される側からすれば「あなただから」と求められる会社で働きたいですよね。

「あなただから」当社に来てほしい、と言うためにはターゲットの設定をきちんとしておく必要があります。

若い男性社員がいい

以前、ある社長に聞くと「若い男性がいい」と言っていたので、
「どうしてですか?」と聞くと「長く働いてくれるから」とのことです。

現在、人口が減少しており、下記の「国立社会保障・人口問題研究所」の2025年の人口ピラミッドの予測を見ると今後、20代前半の人口、つまり“新卒“の人数は激減してゆきます。
この状態では、少ない新卒の取り合いをするとなると何もしないと

「当たり負け」

をしてしまう可能性が高くなります。

出典 国立社会保障・人口問題研究所 人口ピラミッド
   https://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/2025.png

この状況を見ても「若い男性」をターゲットにするつもりでしょうか?

ターゲットの設定方法

新卒の場合と中途採用(キャリア採用)でそれぞれ設定をしますが、まずは定量的な情報を元にセグメンテーション化を行いそこからターゲットを選んでいきます。どの様に市場を分割するかがポイントになりますが、これはいわゆる、フィリップ・コトラーのSTP分析になります。
例えば、
・卒業資格
・卒業後の経過年数
・在職経験(実務経験)
・保有資格
・特定の能力の有無(資格以外)
・過去の経験(実務経験以外の経験)

この時に忘れてはいけないのは、要件を「拡大する」か「絞る」かです。

拡大するか絞るか

例えば、経理のスタッフを募集しようとして、資格要件として簿記検定2級を設定します。
この場合、簿記2級の資格は果たして本当に必要になるのでしょうか?

経理スタッフのスキルを担保する意味で簿記検定2級合格としているにすぎないので、本来は、2級合格でなくても良い場合もありますよね。
つまり、3級しかもっていなくても10年間経理の仕事の経験があれば、それでもよかったりします。

「そんなの自分で判断して応募してこい!」などと言う人もいますが、人手不足の中、求職者の方が選択枝が多く有利な状況で「応募してこい!」なんていっていたらいつまでたっても有益な求人なんてできません。

ここで重要なのは、本当に必要な要件はなにか?です。

先ほどの例で考えてみてください、新卒で社会人経験がない簿記検定2級をもっている人と10年間経理の仕事をしていて簿記検定3級を持っている人とどっちが必要でしょうか?
5年後にベテランの経理スタッフが退職するのでそれを見込んでいまのうちから人を採る状況なのか、経理のスタッフが急に産休・育休に入り即戦力でほしいのか、状況によりますよね?

こういったことも考えて、要件を「拡大する」か「絞る」かが重要になります。

ペルソナ設定

その次に、ペルソナ設定を行います。
これは、いわゆるターゲティングよりももっと細かい情報を考え、実際に存在していそうな人物像を考えます。
・出身校
・家族構成
・あだ名
・趣味、部活、所属サークル
・所属している集団でのポジション
・口癖
・基本的な行動原理
・入社後3年後の姿

などです。

この様に、セグメンテーションからターゲティングを行うのと、ペルソナ設定を両方を行う必要があります。

採用マーケティング④カスタマージャーニー

カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、顧客の購買行動のことです。
顧客(カスタマー)が、動いていくさまを旅行で様々所を移動する様子をジャーニー(旅行)に例えて、カスタマージャーニーと呼びます。

通常のマーケティングで考える時は、一般化した形として

非認知層⇒認知層⇒試し買い層⇒ファン層

という様に考えます。
そして、

「非認知層」から「非認知層」へ移行させるにはどうするか?
「非認知層」から「試し買い層」へ移行させるためにはどうするか?
「試し買い層」から「ファン層」へ移行させるためにはどうするか?

とフェーズを分けて顧客に対してどの様な仕掛けをするか?を考えます。

もちろん、業界、商品・サービス、顧客との関係性によってもっと複雑になると思います。

採用マーケティングでのカスタマージャーニー

さて、これを採用マーケティングで考えると

「非認知層」から「非認知層」へ移行させるにはどうするか?
「非認知層」から「資料請求」へ移行させるためにはどうするか?
「資料請求」から「合説参加」へ移行させるためにはどうするか?
「合説参加」から「エントリー」へ移行させるためにはどうするか?
「内定者」から「入社」(内定辞退をどう避けるか)へ移行させるためにはどうするか?

とフェーズを分けて求職者に対してどの様な仕掛けをするか?を考えます。

採用マーケティングのステップ図

ここで重要なのは、

次のフェーズに移行させるために何をするか!です

これも、新卒や第二新卒向けや中途採用(キャリア採用)によっても異なりますし、
年に1回採用している場合と毎月採用している場合や必要に応じて採用する場合によっても異なります。

これらに対してどの様な「仕掛け」があるのかを考ええることが重要です。

最後に

いかがでしたでしょうか。
自分たちで考えるには非常に手間のかかる作業ではありますが、これらを行うことでやるべき採用活動が可視化され、想定、検証の作業も行えるので、より効率的な採用活動にブラッシュアップされ、理想の人材採用へ一歩、また一歩と前進するための足掛かりとなります。

自分たちだけでは難しいと感じたら、是非人材育成コンサルタントの岡本陽までご相談ください。

人事担当者としての経験と、6000を超える事業支援をさせていただいた経験から、人材採用からその先の育成まで、企業に合った手法を見つけ出し、サポートさせて頂きます。

人材の育成・採用はお任せください。

岡本陽がコンサルティングをする様子
岡本陽(おかもと・あきら)
IMソリューションズ株式会社 代表取締役

「人材の活用・育成」×「IT」を通じた組織の活性化や、訪問しない営業のインサイドセールスを専門とする経営コンサルタント・人材育成コンサルタント。民間企業をはじめ、自治体・商工会議所、中小企業大学校などでのセミナー・研修の講師実績も多数。
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